醜女の舞

醜女の舞 三座(かぶりかえ ともいう)

 この神楽は、「古事記」に記された天孫降臨(天照大御神(あまてらすおおみかみ)孫の瓊瓊杵命(ににぎのみこと)が、大御神の神勅を受けて葦原中国(あしはらのなかつくに)=日本国を治めるために、高天原(たかまがはら)から筑紫の日向の襲の高千穂峰へ天降ったこと)の後日譚を基にしています。

 日向の国に降臨された瓊瓊杵命はある日、美しい娘と出会います。その娘の名は木花咲弥姫命(このはなさくやひめ)といい、命は一目で好きになり、結婚を申し込みます。娘はこのことを父の大山祇命(おおやまつみのみこと)に相談します。

 なにしろ相手は天上人、父はたいそう喜び、木花咲弥姫命と一緒に、姉であり岩のように頑丈な身体の岩長姫命(いわながひめ)も捧げます。これには、瓊瓊杵命にどのような災難が降りかかっても、岩の様に丈夫に末永く生きながらえることができるようにとの願いが込められていました。

 しかし、命は美しい木花咲弥姫命ばかりを愛し、岩長姫命の方は見向いてもくれません。岩長姫命は再三再四言い寄りますが、命は全く心を動かしてくれません。

 岩長姫命は悲しみと嫉妬から、ついには鬼の姿に変身し、命を取り殺そうとします。ここに父の大山祇命が登場し、鬼になった娘を元に戻そうとしますが、一度鬼になってしまった娘はもう、元の姿には戻りません。父は仕方なく刀を抜いて鬼となった娘を退治し、命を救います。

 岩長姫命が鬼に早変わりするところが、この神楽の一番の見せ場といえます。

  

 「古事記」では、瓊瓊杵命が岩長姫命を父の元に送り返したことに大山祇命は怒り、「岩長姫命を添えたのは、天孫が岩のように永遠でいられるようにと誓約を立てたからで、木花咲弥姫命だけでは木に咲く花のように天孫は繁栄するでしょうが、その寿命は短いものとなるでしょう。」と告げた、と記されています。

 大山祇命は伊邪那岐命(イザナギ)と伊邪那美命(イザナミ)の間に生まれた、山を象徴する自然の神で、山は数々の恵みをもたらすことから、金運や商売繁盛の神様として、また雄大な山の神のイメージから、軍神としても崇められています。

出囃子  瓊瓊杵命 下り破

     岩長姫命 うすどろ、下り破

     大山祇命 早笛

 

舞囃子 岩長姫命 かまくら、白、

                                うすどろ(鬼に変わるとき)

立回り 早笛

 

入囃子 瓊瓊杵命 下り破

    大山祇命 出羽